旭市で生まれ育った小山さん。子どもの頃からずっと「まちのパン屋さん」になるのが夢だったと言います。

「旭市では有名なベルグというパン屋さんがあるんですが、よくそこに行って、いい香りだな、あのふわふわを触りたいな…なんて思いながら、窓からずっと作業を見ていました。そのおかげか、小さい頃にパン教室に行ったときに結構うまくできて褒めてもらったんです。それで自信がついちゃって、ますますパンが好きになって。それ以来ずっと、夢はパン屋さんでした」

高校卒業後すぐにパン屋さんになりたかったそうですが、周りの勧めもあって進学し、栄養学を学びます。しかし、その後もパン屋さんになりたいという夢が膨らみ続け、卒業後は「パンの街」として知られる茨城県つくば市で、パンづくりのキャリアをスタート。その後も東京都内で数軒のパン屋さんに勤め、パンの成形や仕込みなど、パンづくりにまつわるさまざまな知識や技術を習得しました。

「卒業後はずっとパンまみれで過ごして、パン屋さんでのすべての作業をやりきることができたと感じたんです。もう大丈夫かなと思えたタイミングで、パン屋さんをやるために旭に戻ってきました」

小山さんの「作り手の顔が見える」SNSの発信は、地域との新しいつながりのきっかけにもなっています。

「はじめは地域おこし協力隊の方からＤＭをいただいて。協力隊の方がお店を宣伝してくださったおかげで、フォロワーさんが増えました。イオンタウンのイベントにも参加させていただけたり、街中を車で走っていたら声をかけてくださったり。SNSを通じてオープン前から新しいつながりが広がって驚いています」

お店に並ぶのは、天然酵母・国産小麦・無添加にこだわった、ほとんどが手ごねで丁寧につくられたパンたち。小山さんのお人柄が伝わってくるような、やさしくてほっとする味わいです。今後は地元のおいしい食材を使った商品も積極的につくっていきたいそう。

「約10年ぶりに帰ってきて、便利で住みやすいまちになったと感じていますが、自然が豊かなところはそのまま。旭ならではのこの空気感がすごく落ち着きます。大好きな地元で夢を叶えられることがとても嬉しいです」

小山さんの夢の詰まった「すゞやベーカリー」は2024年5月に無事オープンを迎え、初日から長蛇の列ができたというほどの人気ぶりです。まずはパン屋さんの仕事を楽しみながら、これからもっと地域とつながる場所や機会を作っていきたいと話す小山さん。毎日つくるおいしいパンと共に、いろいろな夢を膨らませています。